大好きの感触
大好きなバンドの曲を聴いている。大好きだけど最近方向性がよく分からなくなってきて一抹の寂しさを感じる。でもやっぱり曲は好きだし。またライブに行く気がする。
ハンドクリームを塗って大好きなジャスミンの香りに包まれる。大好きだけど何かを飲むにも食べるにも鼻腔がジャスミンの香りにくすぐられてうざったい。でも香りが消えたら、また手に擦り込む。
大好きなベースを弾く。大好きだけどいつまで経っても下手くそ。でもやっぱり楽しいし息抜きになるんだよな。錆びてきた弦にスプレーを吹きかける。
大好きだけど、でも、やっぱり。
弾けもしないのに聴いている曲のベース音が気になる。脳内に響く。音を探る。手の動きを探る。リズムを探る。
何もかも嫌になってしまった時はこうやって、大好きなその音を模索する。イメージはできても実際に弾けば、なんて分かりきっているけれど。模索するその時間が大好きだから。
どうせ苦しむのなら、大好きの手探りをとことん楽しみたい。恋みたいなその感触をいつまでも抱いていられたら。